冬至に歌う音。


 冬至の夜には何かが起こる。
これ、常緑亭の常識。( ̄▽ ̄)
……なんて訳じゃないけれど。
 君は、冬至祭りの喧騒を外れて、一人冬の野をふらつく。
空気は冴え冴えと澄み渡り。
 吐く息も、ちりちりと音を立てるように。

 さて。
一息ついて、考える。
 祭りを抜け出してきたのには、一つ理由がある。
ニナが居ない。
 彼女はもともと、人目を避けるような所があるから、いなくて当然かもしれない。
ルネッサなんか、最初から気にかける素振りもないし。
あ、例の楽器職人は、傍目にもがっかりしたような様子だったな。d( ̄▽ ̄)
 では、どこにいるんだろう。
『どこかでリュートを弾いているに違いない』
 まず間違いなく正解に思える。(笑)
問題は、『何処で』ということだが。
 それが唯一無二の難問だろう。
さぁてと。
 立ち止まると、その瞬間答えが浮かんだ。
リュートを弾いていれば、その楽の音が聞こえてくるはずだろう。
 なぜこの答えに気づいたかというと。
実際にリュートの音が聞こえてきたからだった。( ̄▽ ̄;)
 枯葉を踏みしだく音でかき消されていたほど、かすかな楽。
一度聞いたら、忘れない、ニナの音。
……こっちだ。
 そちらに足を向けようとすると。

ら……ラァ……る……

 ニナのリュートに合わせたように響く、歌声。
物悲しげに奏でるリュートに対して、涼やかに、弾けるような響き。
 全く違う調子で、それでありながらお互いが支え合っているような。
これは、是非とも確かめなくては。
 意味不明の使命感に身を震わす、君。
ただ、問題が一つ。
 二つの楽の音は、それぞれ違う方向から届いてくるのだ。

君は……

ニナのリュートに惹かれる。
謎の歌声を追いかける。

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