冬至に響く音−ニナ。


 初志貫徹。
まず、ニナを探しに行こう。
 ニナに聞けば、歌声の主もわかるに違いない。
さくさくと、彼のを踏み分け、進む君。
 と。
リュートの音が、はたと止む。
 あ、いいとこだったのに……
どころか。
 どっちの方に行けばいいんだ?( ̄▽ ̄;)
仕方ない。
 あてずっぽうに進もう。

 ニナは居た。
両の腕に、リュートをかき抱き。
 目を伏せ、深い物思いにとらわれている様だ。
声もかけ辛いので、もじもじと立ち尽くしている、君。
 その気配に気付いたのか、ニナはゆっくりと顔を上げ、君を見つめる。
赤い目。

……お、お邪魔でした?( ̄▽ ̄;a)
 何となくマヌケに響く問いに、ニナは小さく首を振る。
でも、演奏の邪魔したみたいだし。途中で止めちゃったでしょ。

 ニナはリュートを持ちなおし、調弦をする様に1音、2音と爪弾く。
そしてリュートを顔の高さに捧げ持ち、
ニナ「止めたのは、自分の演奏が至らなかったから……」
 リュートに言い聞かせるかのように、ポツリと呟く。

……至らないなんて。いい曲でしたよ。
トイボネンなんか、泥の中転げまわって喜ぶくらい?d( ̄▽ ̄)
 ニナは、小さくため息をつく。
……あ、いかん。外した。( ̄▽ ̄;)
 しどろもどろになっている君に話すでもなく、ニナは物語を語り始めた。

>ニナの話。

 昔、幼い歌姫と竪琴弾きの、2人組が居た。
歌姫は天才、竪琴弾きは平凡。観客の拍手は、いつも歌姫のもの。
 でも、竪琴弾きは満足だった。
歌姫は良き友達としていつも助けてくれたし、なによりも竪琴弾きは、歌姫の歌が大好きだったから。
 竪琴弾きは彼女の歌を理想にして、その音を目指してひたすら励んでいた。
歌姫の声を引き立てる楽。それ以外に望む音はなかった。

 そしてある日。
歌姫が居なくなった。

 それ以来、竪琴弾きは、音を見失った。

……それって……?
ニナ「創作よ。よくある話だけど」
 ニナは肩をすくめ、その場を去ろうとする。

……あ、そうだ。
 歌姫、で思い出したけど。
君は、肩越しにニナに問い掛ける。
 さっき、ニナのリュートに合わせて歌ってた人って、誰?
ニナは、立ち止まる。
 やや間があいて。
ニナ「私には、聞こえなかったわ」
 振り返りもせずに答える。
……そっか。空耳だったのかな。

 とか考えてるうちに、ニナは去ってしまった。


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