蜘蛛

 蜘蛛は特に害を与えるわけではないのに人間に嫌われている生き物です。
蜘蛛はごく一部の種類、アメリカとオーストラリアの
30種ほどは人間をも殺せる程の毒を持っていますが、
それ以外の蜘蛛の毒は多少痛む事はありますが、人間にはほとんど害を与えません。
もっとも蜘蛛の噛み傷から細菌が入って化膿したりする事はありますが・・・
基本的には蜘蛛は沢山の人間にとって有害な生き物を食べてくれる、
人間にとって非常に有難い生き物なのです。
それなのに気持ち悪い、という人間の身勝手な気持ちだけで嫌われています。

 蜘蛛の分類は節足動物門、蜘蛛型綱、真性クモ目に属し、昆虫の仲間ではありません。
その判りやすい特徴は身体が頭胸部と腹部に分かれている事と、足が8本ある事です。
近い仲間にはダニや蠍がいます。

 蜘蛛は地球上で最も栄えている生き物の1種でしょう。
そして蜘蛛の繁栄の最も大きな原因となっているのが、蜘蛛の最大の特徴である網です。
蜘蛛は腹部から糸を出してそれで獲物を捕えるための、俗に蜘蛛の巣と呼ばれる、罠や、住処を作ります。
これによって効率良く獲物を捕えたり、外敵から身を守ったりできます。

 蜘蛛の糸は1つと思われがちですが、実は1種の蜘蛛が6種類までの糸を使い分けています。
種全体で見ると蜘蛛には7種類もの糸が見られるのです。
この糸は獲物を捕えるための粘つく糸や、卵を保護するための柔らかい糸、
足場とするための粘つかない糸などがあります。
この蜘蛛の糸は非常に細く軽いのですが、自然界の繊維の中で最も丈夫です。
この糸は、鋼鉄の糸の4倍以上もの重さにも耐えられるのです。
この蜘蛛の糸を使って手袋や靴下などを作る事も出来ます。
しかし、1個体ごとの糸の量が少ないため、大量生産には向きません。
そこで、蜘蛛は糸の消費を抑えるために、巣の痛んだ所だけを直して何度も使用したり
使った巣の糸を食べて再び再利用したりしています。

 この糸の用い方は種類によって異なります。
最も一般的なのはこの糸で罠を作る事です。
 一番良く見かける巣は放射状に縦糸を張りそれに丸く横糸を張っていく円網と呼ばれるものです。
この円網の簡略版とも言える三角形の巣や、
もっと簡単にしてしまった横糸1本だけの巣などもあります。
 罠というよりは自分の住処を作る種類もいます。
タナグモの仲間などは植物の根元などに漏斗状の袋を作ってこの中に隠れています。
また、ミズグモの仲間などは水中にドーム状の棚網を作って、
そこに水面から空気を運び込み、そこで生活を行ないます。
 また木の根元や壁際などの袋状の巣を作る蜘蛛もいます。
彼等は袋の中に潜んで、袋の上を通る虫に噛みつき、巣に引っぱり込んで食べてしまいます。
 糸を投げ縄のように用いる蜘蛛もいます。
糸の先に蛾などを誘き寄せるフェロモンを付けて振り回していると
引き寄せられた蛾などが糸に付くのでそれを食べるのです。
この蜘蛛が用いるフェロモンは、判りやすく言えば異性を引き付ける匂いですね。
他にもいろいろなフェロモンがあります。
 多くの蜘蛛は獲物の動きを封じるためにも糸を用います。
暴れる獲物に糸を吹き付けて糸で動きを絡めて封じてしまうのです。
そうすればゆっくり獲物を食べることができます。

 次に蜘蛛の生活について見ていきましょう。
母親蜘蛛は卵の塊を糸で覆ったいわゆる卵のうを作ります。
ほとんどの蜘蛛はこの卵のうを作ったら死んでしまいますが、
中には卵のうを守り続ける蜘蛛もいます。
蜘蛛の子供は産まれた時から小さいながらすでに親と同じ形をしています。
これらの蜘蛛の多くは子供が孵化すると子供の最初の餌になってしまいます。
ごく一部の蜘蛛は子供が孵化しても自分が食べられるのではなく
獲物を狩り続け、子供に餌を運びます。
 蜘蛛の子供は孵化したばかりでの頃はまだ糸も毒も作れません。
1回目の脱皮を行なって始めて糸と毒が作れるようになるのです。
そこで蜘蛛は1回目の脱皮が終わるまで卵のうを離れません。
 卵のうを離れた蜘蛛はあちこちに散らばっていきます。
この時にほとんどの蜘蛛の仲間が空の旅を行ないます。
草などの上によじ登り、糸を空中に放り出して、糸で風を捕まえて飛んで行くのです。
そうして新たな未知の土地にたどり着き、そこで新しい生活を始めます。
 蜘蛛は成長する時に何度も脱皮を行ないます。
種類によっては15回もの脱皮を行なうのです。
節足動物の常として脱皮を行なわないことには成長が出来ませんから。
 成長した蜘蛛の雄は交尾のために雌を探しに出かけますが
これがとても大変です。
何故なら蜘蛛の雌は獲物と間違えて雄をよく食べてしまいますから・・・
そこで雄は雌に食べられないようにいろいろな方法を用います。
 一番一般的なのは匂いによる警告です。
雄は匂い、フェロモンを用いて来訪を告げるのです。
 地面を叩いたり、鳴いたり、雌の巣の糸を弾くなどして音を出して知らせる蜘蛛もいます。
 自分で捕まえた獲物を雌に贈り物として持って行って、
雌が贈り物にかぶりついている隙に交尾を済ませてしまう蜘蛛もいます。
時には獲物がとれなくて、小石などを糸で包んだ偽物を用いる事もあるそうです。
 中には隙を見て雌を自分の糸で縛って動けなくしてから交尾を行なう蜘蛛も・・・・
 こうしてた交尾を済ませた雌は卵のうを作るのです。

 蜘蛛が人間によって有益な事は多くの害虫を食べてくれる事です。
これは田や畑で害虫の事だけではなく、人家の中でもそうです。
家の中の蜘蛛も殺さないほうがいいですよ。
彼等は蝿やダニ、ゴキブリなども食べてくれますから。
 害は噛みつかれる事と糸が汚く見えるという事でしょうね。
見かけが気持ち悪いなどと言うのは人間の勝手な感想で害とは言えないでしょうし・・
もっとも人間なんかを好き好んで噛みつく蜘蛛はいません。
餌にはなりませんから・・・


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