寄生虫

 

 寄生虫とは他の生物の体内や体表に、持続的または一時的に住み込んで
栄養を横取りしている生物のことです。
従って、寄生虫という分類の中には、とても沢山の生物がいます。
例えば蚊、虱、ダニも寄生虫となります。
それどころか私には理由が判りませんが、鼠や蛇も寄生虫になる、と書いてある本もあります
これらは外部寄生虫と呼ばれます。
ですが、一般的に寄生虫と言った場合は内部寄生虫の事をさします。
これらには多細胞の蠕虫(ぜんちゅう)の仲間と単細胞の原虫の仲間があります。
そして原虫の仲間は宿主の体内で増えますが、蠕虫の仲間は一般的には宿主の体内で増える事はありません。
蠕虫の仲間は成長の途中で寄生する、中間宿主を何回か経てからでないと
最終宿主の体内に入らないと成虫になる事が出来なかったり、
土壌に一定期間卵が埋っていないと産まれることが出来なかったりするのです。

 第二次世界大戦直後の日本は回虫や鉤虫(こうちゅう)の寄生率が国民の90%を超えていたそうです。
しかし、その後、駆除が積極的に行われ、一時はこれらの寄生虫がほとんど見られなくなりました。
この当時は寄生虫というと主に回虫や鉤虫の仲間であったため、日本には寄生虫はいなくなった、
と言われるようになりました。
しかし、現在日本にも寄生虫が沢山います。
日本に昔からいる、横川吸虫や、
鯨や海豚の回虫のアニサキスや犬のフィラリア、猫の顎口虫(がっこうちゅう)などの、
他の動物の寄生虫の人間への感染、
外国旅行で感染してくるマラリアや赤痢アメーバ、
輸入食品による、ドジョウの顎口虫や、野菜の回虫など・・・・・
この後はいくつかの寄生虫について、具体的に説明していきます。

 アメーバ赤痢を引き起こす赤痢アメーバは普通は盲腸付近の組織を住処として赤血球を食べて増殖し、
組織を溶かして内部に入り込み潰瘍を作って消化管に穴を開けてしまったりします。
症状としては粘液や血液が混ざった下痢が続きます。
このアメーバには2つの時期があり、体内で行動している時期を栄養型、
身体を縮めて殻を被って大人しくしている時期を嚢子型と言います。
感染はこの嚢子型を水と一緒に飲み込む事によって起ります。
この寄生虫は発展途上国を中心に世界の10%もの人間が感染していて死亡者も沢山います。
この寄生虫に感染しない方法はともかく外国では生水は飲まない事です。
ちなみに氷もどんな水で作られているか判ったものではないので口にしてはいけません。
また、コップが汚れている事もあるので注意が必要です。
最近男性の同性愛者の間で流行する、性病としての側面も発見されました。
これは肛門付近を嘗めて嚢子を口に入れてしまうためです。
 また他にも人間の脳に侵入するアメーバもいます。
これはネグレリアというアメーバで鼻の粘膜から侵入し、
嗅神経にそって脳に侵入します。
症状は感染後に急に昏睡状態に陥り1週間後に死亡します。
このアメーバはありふれた種類ですが発病例は少なく
感染する確率は非常に低いものです。
しかし、感染してしまったら、まず助からないので注意すべきでしょう。
このアメーバはプールや沼などで水泳をして感染します。
43〜44度という高温を好むので、夏が危険ですね。

 寄生虫の中でも最も有名なのはサナダムシなどの条虫の仲間でしょう。
条虫は1個の頭節と数個から数千個の四角い片節から出来ていて、平べったく長い、
きしめんのような形をしています。
頭節で宿主の腸壁にくっついて、頭節のすぐ下で次々と片節を作って成長していき、
種類によっては10メートルを超える大きさになります。
消化管は持っておらず、体表から直接栄養を吸収します。
片節には1対の雌雄の生殖器官が備わり、自己受精を行い、
卵がぎっしり詰まった片節が下のほうから千切れて糞便中に排泄されます。
この卵がミジンコに食べられ、そのミジンコが魚に食べられ、その魚を人間が食べると条虫に感染します。
特に危ない魚はサクラマスで、魚市場に並んでいるサクラマスには1尾平均3.6匹の幼虫がいた、
という報告があります。
また、最近非合法の痩せ薬として利用されている、という話もあります。
しかし、ヨーロッパの条虫は強い貧血を起こし、人間を痩せさせますが、
日本の条虫は、貧血はおこらずあまり宿主を痩せさせないようです。
消化不良や、イライラ、肛門の違和感などの症状を引き起こしますし、
このような馬鹿な事は止めておいた方がいいでしょう。

 人の小腸に寄生する横川吸虫は日本では最も普通に見られる寄生虫の一つです。
体長が1ミリ程と小さく、よっぽど多くに寄生されないと症状がほとんど出ないため、
気付かれない事が多いようです。
糞便中に排泄された卵をカワニナという淡水産の貝が食べると孵化して、
貝のなかで無性生殖により何千もの幼虫に増えて、幼虫が貝から抜け出して水中に泳ぎ出して、
淡水魚の体内に侵入します。
体内と言っても、この寄生虫は鱗に寄生します。
時によっては鱗に2000匹以上も寄生している事があるそうです。
危ない魚は鮎やシラウオです。

 肝吸虫は日本で昔に最も恐れられていた寄生虫でしょう。
症状は腹水がたまり、黄疸がでて、やがては衰弱死に至る、という経過を辿ります。
肝臓に何千匹も寄生する事もあります。
解剖してみると、肝臓から数えきれないほどの肝吸虫が這い出して来るそうです。
糞便中に排泄された卵をマメタニシという淡水産の貝が食べると孵化して、
貝のなかで無性生殖により何千もの幼虫に増えて、幼虫が貝から抜け出して水中に泳ぎ出して、
コイ科の淡水魚の体内に侵入します。
危険な魚はマルタ、イシモロコ(モツゴ)などです。
コイやフナには滅多にいません。

 住血吸虫も最も恐れられていた寄生虫の一つです。
症状は発熱、下痢、腹痛、肝臓の腫れと共に粘血便が見られ、痩せ細って、腹水がたまり死んでしまいます。
この寄生虫の特徴は直接自力で人間の体内に潜り込む事です。
ミヤイリガイという淡水産の貝の体内で増殖してから水中に泳ぎ出し、
田植えや水浴びをしている人間の皮膚から体内に潜り込みます。
感染しない方法は淡水産の貝が多数生息しているような水には決して触れないことです。
外国で、暑いから水浴びをして感染してくる、という事がよくあります。

 昔の日本では寄生虫と言えば回虫を指すほど有名な寄生虫でした。
しかし、現在では医者でも知らない人がいるようです。
この寄生虫は世界中に分布していて、人間への寄生率は数10%にもなります。
大きさは雌は30センチ程、雄は20センチ程と大柄です。
1日に1匹の雌が20万以上の卵を産み、土壌中に3週間ほどさらされると孵化能力を得ます。
これが野菜などについて人間に食べられると感染します。
この寄生虫の特徴は体内を移動する事です。
この寄生虫は腸内で孵化して、腸壁に潜り込み肝臓に至り、そこから肺に移動して、
肺を出て食道へ行き、再び飲み込まれて小腸で成熟します。
この時、時々間違えて口から出てくる事があります。
感染しないためには出来るだけ生野菜を食べない事です。
特に有機肥料を使っている野菜が危険です。
最近では野菜も外国からの輸入品が多いため、サラダを食べて感染するケースが増えているようです。
ちなみに鯨や海豚の回虫がアニサキスです。
アニサキスは大抵の海産魚から見つかり普通は体長が2センチほどです。
生の魚をたべて4〜5時間後に激しい腹痛や吐き気に襲われた場合はこの寄生虫を疑ってもいいでしょう。
特に危険な魚は鯖です。
酢に漬けたくらいではなかなか死なないので、シメサバやサバズシでも感染する事があります。
このアニサキスは大抵魚の内臓にいるので、内臓を奇麗に取り除けば感染する事は少なくなります。
スーパーなどで売っている魚の切り身で感染する事はまずないそうです。

 現在日本で最も知られていて患者が多い寄生虫症は蟯虫でしょう。
蟯虫は盲腸付近に寄生する雄は2〜3ミリ、雌は1センチほどの白い寄生虫です。
蟯虫は他の寄生虫とは事なり人間の体内では産卵しません。
夜、人間が寝ている時に肛門から這い出して、肛門付近に産卵します。
雌は産卵後に死んでしまいます。
この蟯虫の卵の発育は早く数時間で卵の中で幼虫になります。
そして人間が活動を始めるとこの蟯虫卵がお尻から落ちてあちこちにばらまかれます。
そしてこの卵が人間の口に入ると蟯虫に感染します。
症状は肛門の痒みによるイライラや肛門付近を掻いて起こる炎症などです。
蟯虫を駆除する時は家族全員に感染している可能性が高いので全員を一斉に駆除(駆除薬を飲みます)し、
更に、衣服を全て洗濯し、布団などを全て日光で干す(蟯虫卵は日光で死にます)必要があります。
幼稚園や小学校で流行っている場合には全ての生徒の家で行う必要があります。
そうしなければ、また感染している人から蟯虫がうつって広まってしまいます。

 昔から多くの人間を悩まし、最も多くの死者を出したと思われる病気がマラリア原虫によるマラリアです。
現在、世界中に約3億人の患者がいて、毎年200万人以上の死者が出ています。
マラリア原虫はハマダラカの仲間が人間を吸血する時に媒介されます。
この時、蚊の唾液腺にいるマラリア原虫の幼虫が人間の体内に入り込み、
肝臓などの組織に入って一定の発育、そして休眠を行ってから組織を出て血管に入り込み
赤血球を襲って増殖します。
この時に赤血球は破壊されてしまいます。
この時に高熱と発作が起こります。
海外旅行の時に飲む、マラリアの予防薬とは、実はこの血管内のマラリア原虫を殺す薬で、
内臓にいるマラリア原虫は殺せません。
そのため、この薬は、内臓にいるマラリア原虫が全て血管に出てくるまで飲み続ける必要があります。
海外旅行から帰って来たので薬を飲むのを止めてしまった後で
内臓に潜んでいたマラリア原虫が血管に侵入してマラリアを引き起こす事があるのです。
ですから、マラリアの流行地に行った時には、
日本に帰った後でも3ヵ月くらいは薬を飲み続けた方がいいでしょう。
もっとも薬による副作用もあるのでどの位の期間飲み続けるのが良いかは一概には言えません。
感染から半年後にマラリア原虫が血管に現われてマラリアの症状が出た、という話もあります。
日本ではマラリアの診断がつきにくく、1回の診断でマラリアだと判るのは1割程度という報告があります。
ちなみに、熱帯熱マラリア(マラリアにも種類があるのです)の場合、
治療が少しでも遅れると助かりません。
マラリアの感染には細心の注意を払っておくべきでしょう。
マラリアの感染を防ぐには蚊に刺されないように注意することです。
マラリアほ媒介するハマダラカは主に夕暮れと夜明け前に吸血するので、この時間帯には外出しない、
いくら暑くても肌の露出が少ない長袖の服を着る、
などのちょっとした工夫でもマラリアの感染率を下げる事が出来ます。

 エキノコックスは北海道で主にキタキツネが媒介する寄生虫です。
この寄生虫は狐、犬、狼などが最終宿主であり、糞中に排泄されて、
それを鼠、羊、牛などが食べて中間宿主となって、
それをまた、狐、犬、狼が食べるという生活を送っています。
それが、誤って人間の口に入ると中間宿主となり、
小腸で孵化した幼虫が血管に入り、血液に乗って全身の臓器にばらまかれます。
そして、くっついた先の組織で包虫という袋を作って、その中でどんどん増殖します。
それに伴い、袋はどんどん大きくなっていき、周囲の組織を圧迫したり、破壊したりします。
時には袋が破れて全身に広がって、そこでまた包虫を作ったりします。
この包虫は腫瘍に間違われる事がよくあり、症状も悪性腫瘍、つまり癌にそっくりです。
感染しないためには決してキタキツネには触ったりしないことです。
また、犬にも注意することです。
感染率はキタキツネよりも低いものの犬も最終宿主となってエキノコックスの卵を撒き散らします。
また、野外の水、例えば沢の水などには狐などの糞が混入している事があるので飲んではいけません。
生息場所は北海道の全域に及んでいるそうです。

  またまだ寄生虫には沢山の種類がありますが切りがないのでここらへんで終わりにしておきます。
もし、取り上げて欲しい寄生虫がありましたら、私の方へ連絡をお願いいたします。
私が判る範囲で取り上げてみますので。

 ここでは寄生虫症について、症状と防ぎ方を書いてきましたので、
これを読んで、寄生虫とは恐ろしいものだと思った方も多いと思います。
確かに一部の寄生虫は人間に致命的な症状を引き起こしますが、
ほとんどの寄生虫はそれほど酷い症状は引き起こさないのです。
また、最初にも書きましたが、寄生虫症とは決して珍しい病気ではありません。
おそらく全く寄生虫に感染していない人などほとんどいないのではないでしょうか?
寄生虫をむやみに恐れず、致命的な寄生虫にだけ注意しておけばいいと思います。 


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