蚊という生き物は日本で最も嫌われている昆虫の一つでしょう。
多分、ゴキブリ、蝿、蚊の3つが嫌われている昆虫のトップ3でしょう。
形態については説明するまでもないでしょう。
分類としては節足動物門、昆虫綱、双翅目、蚊科となります。
この双翅目とは1対2枚の翅をもつ仲間で、ガガンボ、蝿、ブユ、虻などほとんどが嫌われ物の昆虫です。
蚊が嫌われている最も大きな理由は吸血を行い、その後に患部が痒くなることでしょう。
この吸血とは雌のみが行う行為です。雄は吸血を行いません。
この吸血とは卵の成熟のための行為であり、蚊の成虫の栄養となる訳ではありません。
蚊は基本的には吸血を行わないと産卵できないのです。普段の食事としては花の密を吸っています。
吸血後に患部が痒くなるのは蚊が吸血時に唾液を体内に送り込むからです。
この蚊の唾液には麻酔物質、消化液、血液凝固抑制剤などが含まれています
麻酔物質は吸血相手の感覚(痛み、痒みなどを)3分間ほど鈍らせます。
つまり蚊にとって3分間は安全に吸血できる事になります。
しかし、実際には吸血に3分以上かかることは珍しくありません。
消化液は血液の消化、吸収を助けて、血液凝固抑制剤は血が固まるのを遅くして、吸血しやすくします。
時々、蚊が吸血をする時に、別の血液型の人から吸血すると、血液凝固がおこらないのか?
という質問を受けます。
確かに蚊が違う血液型の人間から吸血すると蚊の胃の中で血液凝固が起こります。
しかし、血液凝固という現象は、血が固い個体へ変るのではなく
単に粘度た高くなってドロドロになるというだけの事なので、
胃袋の中で多少血がドロドロになっても、後は消化されてしまうだけなので
なんの問題もありません。
人間の血管の中で血液凝固が起こると、
血が流れにくくなって死んでしまいますが・・・
蚊は、O型の血液を好みA型を嫌うという説がありますが、
実際にはほとんど差はないようです。
もう1つ蚊が嫌われている理由は翅音でしょう。
寝ようとしたときにこの音が聞こえると寝付けなくなるという方も多いのではないでしょうか。
蚊のこの翅音には意味があります。これは、雌が雄を呼ぶためのものです。
違う種類の雄が間違ったりしないように、種類ごとに波長が違っています。
また、雌は交尾前と交尾後では波長が変わるという報告もなされています。
これは蚊は基本的には1回しか交尾を行わないので、
雄に交尾を行ったか行っていないかを知らせるためだと言われています。
でも実際に観察していると何度も交尾している事が珍しくないんですよね(笑)。
蚊の生活について見ていきましょう。
蚊は雌が吸血を行った後、3〜4日後に産卵を行います。
産卵場所は沼、水たまり、樹洞、容器の中などの水面や水際のごみなどです。
そして、約1週間ほどでボウフラとなります。
薮蚊の卵は乾燥に強く水が乾いてしまっても3ヵ月ぐらいは生きています。
家蚊の卵は乾燥耐性がなく、乾燥すると死んでしまいます。
薮蚊の卵は乾燥させて半年ほど放っておいても3分の1ぐらいが孵化しました。
そして、ボウフラは水中の腐った落ち葉や生き物の死骸、バクテリアなどを食べて
条件が良ければ1週間から10日ほど、条件が悪ければ2〜3ヵ月で4回の脱皮を行い蛹となって
2日ほどで成虫となって飛び立ちます。
それから1〜2日後に交尾を行い、羽化から2〜3日後に吸血を行い、
吸血から3〜4日後に産卵を行います。
また、1回産卵した後でも、また1週間もすれば吸血、産卵を行います。
1回に産む卵の数はだいたい50〜100ほどです。
もっとも種類によっては300を超える卵を産む蚊もいますし、
20ほどしか産まない蚊もいますが・・・
蚊という生物は人間にとっては大きな害を与えています。
マラリア、黄熱病、フィラリア、デング熱・・・・蚊が媒介する病気は多く存在します。
しかし、全ての蚊が人間に害を与えているかと言えばそうではありません。
人間を吸血する蚊はほんの一部の種類なのです。また、蚊はいろいろな自然界での役割をになっています。
まず、幼虫のボウフラの水中の有機物の分解に一役かっています。
有機物が多い水域ではボウフラがいなくても水中の有機物はバクテリアによって分解されるでしょうが、
その場合はバクテリアの排泄物によって水は汚れ、
また、バクテリアが増えすぎて水中の酸素がほとんど消費されてしまい、
生き物が住めなくなってしまうかもしれません。
ボウフラは自分で有機物だけでなくバクテリアも食べ、呼吸は空気中から行うのであまり水を汚さないのです。また、成虫は植物の花粉の媒介を行います。都会での蚊の立場は複雑ですね。
人間を激しく吸血して病気の媒介を行うかたわら、汚い溝水の浄化を行っています。
もし、都会の蚊を全滅させる事に成功したら、
都会の溝水は本当に腐ってしまって強い悪臭を放つようになるのではないでしょうか。
ボウフラは汚い水に生息していると思われていますが、
実際にはきれいな水でないと生活できない種類がほとんどで、汚い水で生活できるの種類はわずかです。
しかし、汚い水という物は富栄養であるため(有害物質も多いですが)多くの数が育つことができます。
都会の水をきれいにすると蚊の数は激減するでしょう。