ヒキガエル

 

 ヒキガエルは脊椎動物門、両棲綱、無尾目に分類されます。
カエルの仲間は全てこの分類に入ります。
 ヒキガエルはガマとも呼ばれている、体長が10数センチの皮膚がざらざらしたカエルです。
乾燥に適応した種類であり、オタマジャクシと交尾、産卵の時期を除いては基本的に水に入りません。
皮膚の毒腺から、いわゆるガマの油と呼ばれる毒液を出します。
この毒があるためにヒキガエルを捕食する生き物はほとんどいないようです。
それほど活動的なカエルではなく、地面をのそのそと歩いて、見つけた虫などを食べています。
行動範囲は非常に狭く、一晩で15センチしか動かなかったという観察例があります。
しかし、時には木に登ったりする事もあるようです。

 次はヒキガエルの成長について見てみましょう。
ヒキガエルは集団で池に産卵を行います。
雌1匹当たりの産卵数は2千〜2万とカエルとしてはきわめて多いものです。
その反面、卵は非常に小さくなり孵化すると2〜5ミリほどの非常に小さなおたまじゃくしになります。
一般にはカエルの大きさとおたまじゃくしの大きさは反比例の関係にあると言われます。
中にはおたまじゃくしもカエルもきわめて大きい食用ガエルのような例外もありますが・・・
ヒキガエルのおたまじゃくしは猛烈な勢いで藻や魚の死骸やごみなどの
食べられそうな物なら何でも食べて成長します。
おたまじゃくしの時期の死亡率は非常に高く、
メダカやヤゴ、ゲンゴロウやイモリ、蛇や烏などの沢山の生き物に食べられてしまいます。
しかし、発育が進んで毒腺が発達するとあまり食べられる事はなくなるようです。
変態して子ガエルになった時の体長はわずかに7〜8ミリほどです。
この子ガエルが6月の初旬のある日に一斉に上陸します。
その数は凄まじく場所によっては数十万匹にもなります!
この子ガエルは雨の日に一斉に移動を開始し、あちこちに散らばっていきます。
この時期は乾燥に非常に弱く、乾燥した状態だと数時間で死んでしまうそうです。
この子ガエルはササラダニなどの小さな生き物を食べて凄い勢いで成長します。
3ヵ月間で体長が3倍以上に成長するそうです。
もっとも3倍に成長したとしても、まだ体長は20数ミリであり小さなカエルですが・・・
1年間では6センチほどに成長するそうです。
もっとも、1年間に生き延びる事が出来るのは全体の約3%ほどでしかありません。
ここまで生き延びる事が出来ればヒキガエルの死亡率は低くなります。
1年目からから2年目までの生存率は50%ほどだそうです。
2年目には体長が10センチ程に成長して成熟し、雄は交尾が可能になります。
雌はもう少し成長に時間がかかり、交尾が可能になるまで3年はかかるそうです。
寿命は雄が11年、雌が8年ほどだそうです。

 大人のヒキガエルの生活は非常に優雅なものです。
夜行性で主に雨が降った時に地面から出てきます。
そして、真夜中頃にはほとんどはまたねぐらに引っ込んでしまします。
1回の採食に出てくる時間は大体は3時間以内。
行動範囲も非常に狭く大抵は出てきた場所から数10センチしか移動せず
その場で虫などを食べて、すぐに近くに潜り込んで寝てしまいます。
しかも、1回採食に出てくると次に出てくるのは20日後などという事はざらのようです。
1年間でも採食に費やした時間は合計約24〜72時間ほどだとか・・・・
あとは交尾、産卵の時期以外は地面の中で寝ています。
餌の奪い合いや、寝床の取り合いなどは全く行わず、仲良く一緒に餌を取ったり、寝ていたりします。
冬は冬眠していますが、この冬眠に関しても大ざっぱで、土に潜らず
直接地面の上で雪に埋もれて冬眠している事もあるようです。
冬眠前に栄養を溜めるためにせっせと捕食に励むような事もありません。
こんないいかげんな冬眠でも死亡率は非常に低く、春になると9割ものヒキガエルが元気に姿を現します。

 ヒキガエルはその姿から嫌われる事が多いようですが、
全く人間に害のないおとなしい生き物です。
害がないどころかいろいろな害虫などを食べてくれます。
しかし、1匹が食べる量は微々たるものなので、もし、害虫の駆除に使おうというのなら
多くの個体が必要でしょう。
ヒキガエルの子供が多量に移動するときに道路などが近くにあると
無数の子ガエルが車に轢かれて腐って、嫌な臭いがする事があります。
それでヒキガエルを全滅させようなどという自治体があるようですが、
これは子ガエルの大量虐殺を行っている、人間の方に問題があるように思います。
彼等は人間から見れば無害でか弱い生き物なのですから・・・


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