ダニ

 

 ダニは比較的最近に害虫として有名になりました。
家の中で大発生をして人間から吸血を行なうために全身が痒くなったり、
アレルギーの原因になったりするというのがその理由です。
また、食物の中に大発生する事があることも知られています。
ダニはこれらの理由によって非常に嫌われていますが実際の所はどうなのでしょうか?

 ダニは昆虫の仲間だと思っている人が多いですが、
節足動物門、蜘蛛形綱、ダニ目に分類されていて、実は昆虫ではありません。
そして、吸血を行う生き物だと思われていますが実際には人間から吸血を行うのは全体のごく一部です。
日本では2000種ほどのダニが知られていますが、
その中で人間から吸血を行うのはわずか20種ほどです。
しかも、この中で人間を好んで襲うのは実にたった数種類なのです。
シラミもダニの仲間だと思っている人が多い様ですが、実は違います。
他の種類は基本的には他の生物から吸血するのですが、
餌に困ったりすると仕方なく人間も襲う事があるといった程度なのです。

 人間を襲って害を与えるもので有名なものの1つは、ヒゼンダニです。
ヒゼンダニは指の間や膝の裏、陰部などの湿った皮膚に入り込んで中に細く長い道を切り開きます。
そして、アレルギー反応を引き起こしてひどい痒みをもたらします。
これは疥癬と呼ばれている病気で接触感染します。
人間同士よりもペットから感染する事の方が多い様です。
他に有名なのはイエダニです。
家の中であちこちを刺されて痒いというのは、昔はこのダニの仕業でした。
現在は滅多に人間から吸血を行わずに、本来は他のダニを捕食しているツメダニの事のほうが多い様です。
本当はネズミや鳥などに寄生しているのですが、人間がネズミ取りなどを用いて殺してしまうと、
吸血相手がいなくなって、仕方なく人間を襲います。
本来は人間なんかはあまり好みではないのです。
あとはツツガムシとマダニでしょう。
ツツガムシはツツガムシ病を媒介することで有名ですが、
これも本来はネズミの耳などに寄生していて、あまり人間は好みではありません。
しかも、ツツガムシ病を媒介するのは幼虫の間だけです。
マダニは人間も吸血します。
身体は普段は1〜2ミリほどですが吸血を行うと2〜3センチくらいまで膨らみます。
野外でダニに食らい付かれてしまったというのは、このマダニです。
放っておくと2〜3日も吸血し続けたりします。
まだ、無理やり手で引き剥がすと、口噐が皮膚に残って、
そこから化膿したりしますので医者に行ったほうがいいでしょう。
このダニはQ熱などを媒介します。

 日本で人間を吸血するダニというのは実はこのくらいなのです。
あとはダニがアレルギーを引き起すという話しがありますが、
このアレルギーの原因は自分の身体以外のあらゆる蛋白質が考えられるので、
ダニだけが悪いというのはナンセンスです。
アレルギーを防ぎたかったら、あらゆる生物を自分の周りから排除しなければなりません。
もちろん食べ物も生物なのをお忘れなく。
これをダニだけが悪いと言って大騒ぎするのはとても馬鹿げた事です。

 ダニは時には家の中で大発生をする事があります。
これは、ほとんどがコナダニであり、このダニは吸血は行いません。
しかし、この時にコナダニの捕食者であるツメダニがまれに人間を吸血する事があります。
コナダニ自身はコナダニに対してアレルギーを起す人以外には無害です。
コナダニは湿った暗い所を好みます。
最近の建築物が風通しが非常に悪いため、コナダニが大発生しやすいのです。
特に風通しが悪い洋風建築に畳という組み合わせが問題です。
畳が常に湿った状態になりますので・・・
湿った畳はコナダニの大好物なのです。
このダニは新築のアパートなどで畳が白く見えるほど発生する事があります。
このダニの発生を防ぐには、よく掃除を行い、風通しをよくし、日当りをよくし、
畳を新しいものに変えない事です。
新しい畳ほど富栄養なので、増えやすいのです。
このコナダニの仲間にはいろいろな物を食べる種類がいて、砂糖や七味唐辛子なども食べるものがいます。
食物の中に発生するダニのほとんどはこのコナダニの仲間です。
ちなみに食べてもなんの問題もありません。
消化されて、栄養になるだけです。

 あと害虫として有名なのはハダニの仲間でしょう。
植物の液を食料とするダニで野菜や果物の害虫として有名です。
このダニを駆除するためにいろいろな農薬が発売されていますが、
ダニに耐性が出来てきてあまり効かなくなってきているようです。
それに対して、捕食者のダニであるカブリダニを撒くというダニを利用する方法が考えられています。

 長々と人間に害を与えるダニについて書いてきましたが、これらのダニはほんの一部です。
ほとんどのダニは落ち葉や動物の死骸などを食べて分解している掃除屋さんなのです。
もし、ダニがいなくなったら、野外では動物の死骸や落ち葉などが完全に腐ってなくなってしまうまで、
非常に時間がかかり、いつまでも腐敗臭を漂わせ続ける事になるでしょう。
豊かな土地には多くのダニが生息しており、その数は1平方メートルあたり、2万から10万匹もいます。
逆に貧しい土地にはダニの数が少なくなります。
もっとも貧しい土地に適応したダニというものもいますが。
ダニを見ればその土地が豊かかどうかはすぐにわかります。
自然保護運動などによって自然が戻ってきた、などという話しをよく耳にしますが、
実際にはダニを調べてみると、まだまだ、自然状態にはほど遠い事がほとんどだそうです。

 ダニはどこにでも多く存在しています。
土の中、大気中どころか水中にも沢山います。
それなのに、ダニが発生した、と言って大騒ぎするのはおかしな話しです。
まあ、変な種類のダニが大発生したから、という事なのでしょうが、
このダニの大発生の原因を作っているのは人間です。
一部のダニにとって住み心地の良い環境を作るから大発生が起るのです。
湿度と日当りに気を使っていればあまり多くのダニは発生しないでしょう。
もっともなにもしなくてもダニはあらゆる所に沢山いますし、
人家に大発生した所でダニアレルギーの人以外にはたいした問題はありません。

 最後にダニについて面白い話しをしましょう。
アルテンブルガーチーズというダニによって作るチーズがあります。
このチーズはチーズコナダニが沢山いる容器のなかに棒状のチーズを入れて数週間おいたものです。
これを表面のダニを軽く払い落としてそのまま食べるそうです。
当然生きたダニも一緒に食べる事になります。
これには非常に鋭いピリッとした独特の香とレモンのような酸味があり、食欲を刺激するそうです。

 


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