はしもと99のトップにもどる
USBサターンパッドを作る
さて、たまには作業過程を解説してみよう。
はしもと99には珍しい独立コンテンツだ。しかも写真つきである。
はじめに
USBの壊れたパッドがある。それを壊れたまま放置しておくのはもったいない。
サターンパッドはとてもいいパッドだ。しかし、基本的にサターンという機械にしかつながってくれない。IF-SEGAも生産中止みたいだし。
で、そんな2つを合体させて、USBでパソコンにつながるサターンパッドを作ろう。ってな話。
これまでにも、雑記内でちょこちょこ書いてるけど、たまには実物を紹介してみる。
注意
これは私がやったことの記録です。
壊れたパッドを何とかしたいと思っているあなたが、これと同じことをするのは勝手ですが、こうしろと推奨しているわけでもないですし、もし、何か不具合があっても、私は何の保証もしないので、念のため。
準備
作業に入る前に用意したもの。材料とか道具とか。
ほとんどはすでに持っていたもので、今回新しく購入したのはサターンパッドだけである。
材料
まず、USBサターンパッドを作るための材料。
壊れパッド
ELECOMのUSBゲームパッド。『サターンパッドみたいな』パッドである。安価で、操作感がよく、過不足のないボタン数と配置。型番はJC-U609。
ただし、方向キー周辺の耐久性に問題があって、すぐ壊れてしまうのが欠点。私も友人もこのパッドを買って、格ゲーとかやっててぶち壊した。
Webで検索すると、同様の意見を多数発見することができる。ある意味名機かもしれない。
入手方法:上記の友人からもらう
入手価格:もちろん0円
サターンパッド(白)
セガサターンの純正パッド。操作感やボタン配置も使いやすいし、耐久性もまず問題はない。ちょっと前は、そこそこの値段がついていたが、最近はさすがにとても安い。
サターン本体よりは使いみちがある。
入手方法:ハードオフのジャンクコーナーで購入
入手価格:300円だったかな?
コード
特に説明するようなものでもない。細いものがいいと思う。
色がいろいろあると、もしかしたら便利かもしれない。
入手方法:マルツ電波で購入
入手価格:忘れた
はんだ
特に説明するようなものでもない。一応電子部品用。ペースト入りは基本。
材料というのはちょっと違うかとも思うが、材料と言えば材料であろう。
グフのヒートロッドを作るのに使ったりもする。
入手方法:ホームセンターで購入
入手価格:忘れた
道具
それから、この作業に必要となる道具
はんだごてとこて台
はんだごては、まだ使いなれていない新しいもの。こて台は、あったほうが便利だが、なくても別にかまわないと思う。
主にはんだ付けに使うが、たまにプラスチック部品の加工に使うこともある。
カッターナイフ
愛用の品。革のホルダーは昔、業者系バイトによく行っていた頃のなごり。
切断や加工など、いろいろな場面で使う。
はんだを吸うやつ
なんて呼べばいいのかよくわからない。商品名はSPPON。
ばね仕掛けの注射器のようなもので、右の写真のようにして溶かしたはんだを吸い取る。
はんだ付けに失敗したときや、基板から部品を外したいときなどに使う。足が3本以上ある部品を基板から外したいときには必携。
電気ドリル
先端を交換することで、いくつかの作業に使える。基本的には無くてもなんとかなるものだが、手でやると疲れる作業がとても楽になる。
ドリルで穴をあける場合に使う。あるいは、削ったり磨いたりするのにも使う。ねじを回すのにはそれほど使わない。
ドリルビットとチャック
ドリルが細いので、チャックを使って固定したりする。
当然穴をあけるために使う。
小さいドライバ
大して精密でもないごく小さなねじ回し。
隙間に突っ込んで、部品を外したり、押さえたり、いろいろする。たまにはねじを回すこともある。
デジタルテスタ
抵抗や電圧や電流を計測する道具。
ほとんどの場合、抵抗測定モードで、回路がちゃんとつながってるかどうかの測定に使う。
電池とコードと豆電球とかでもいいような気がする。
その他
ピンセット、ラジオペンチ、ニッパ、油性マジック、プラスドライバ。
1つ1つ解説するのも面倒になったのでまとめて紹介。
いろいろ使う。
道具?
道具というにはちょっと違うかもしれない道具。
あったほうがいいかな? という程度。
小物入れ
IMPACTというミントタブレットの空き容器。細かいものを入れておくのにちょうどいい。
ビスなどの小さな部品をなくさないように、これに入れておく。
眼鏡
さして度の強くない近視用眼鏡。
今回の作業では、あまり欠片が顔に飛んできたりはしないだろうが、ごくごく小さな欠片でも、目に入るととても痛いのでかける。
視力補正の意味もある。
デジカメ
撮影用。借り物。
ちなみにこの写真は、鏡に写して撮影して反転したもの。
バーボン
WILD TURKEYとMaker's Mark
気合が乗らないときに勢いをつけるのに使ったりする。ちなみに今回は使用していない。
作業スペース
ほとんどの写真の背景になっている緑色のカッターマット。
後から気づいたが、1センチ方眼になっているので、それぞれの物の大きさの指標にもなってくれている。
ばらす
まず、バラバラにする。
どちらのパッドも、ごく普通のビスで固定されているので、プラスドライバで簡単にばらせる。
壊れパッドの方は、シールの下にもビスがあるのでちょっとだけ注意。
壊れパッド
バラバラ
基板表裏
壊れたパーツ
今回壊れていたパーツ。方向キーの下にあって、各方向のボタンを押す部品である。
そこらへんの基本的な構造はサターンパッドでもだいたい同じで、同じような部品が存在する。
並べてみると結構似ている(右の写真)。ちなみに、左は壊れパッド(以前使ったパッド)のもので。右はサターンパッドのものである。
形は似ているが、素材が違う。
こればかりは直接触ってもらわないとわからかもしれないが、サターンパッドのものは柔軟性があり、多少力を加えても少し歪むだけだ。壊れパッドのものは全く柔軟性が無く、力を入れても変形しない。で、もっと力を入れるとぺきっと折れるわけだ。
サターンパッド
バラバラ
基板表裏
回路設計
もちろん、設計などというほど偉そうなものではない。
壊れパッドの基板を見て、回路図を書く。いや、それにしても回路図というほど偉そうなものではなくて・・・
よーするに、どこに何がつながっているのかをメモするのだ。そして、部品の組み込み方法などを検討するわけである。
前回書いたものがあるので、今回はこの作業はパス。
回路メモ
私が作業に使ってたのはこんな感じなのだが、記号その他、あらためて見てみるとものすごく適当。昔工学部に在籍していたことがあるとは思えない。
さらにばらす
はんだごてとはんだ吸うやつを使って、はんだ付けされた部品を外す。
ICは足がたくさんついているので、はんだを除去する方法がなければ、外すのは非常に困難である。
壊れパッド
部品の外された基板と部品
ICや抵抗やコンデンサは大切に保管するとして、基板自体はもう要らないから捨てちゃってもいい。
電子部品としては、なんか以下のような感じ
・石(CY7C63001A-PC):Cypress製、結構いろんなとこで使われてるらしい
・振動子(たぶん):セラミック振動子だと思うが、よくわからない
・抵抗その1:色帯をちゃんとメモってないので抵抗値はよくわからない
・抵抗その2:色帯をちゃんとメモってないので抵抗値はよくわからない
・コンデンサ:セラミックコンデンサだっけ?
・電解コンデンサ:極性があるので注意しなきゃいけないことで有名
電子部品を取り扱っている店などでこれだけの部品を集めれば、USBパッドが作れるということかもしれないが、わざわざ部品を集めてまで作ろうとは思わない。
サターンパッド
部品の外された基板
基板上のパターンは後で使うので、多少丁寧に作業する。外したICやコネクタはもう要らないので捨てちゃっていい。
基板加工
サターンパッドの基板を加工する。
加工準備
ボタン用のゴム部品が乗るので、部品やはんだ付け部分が干渉しないように、とりあえずマジックで線を引く。
ケースとの干渉も考えて、部品をどこに置くか決める。
スペースの都合と、配線の都合がある。
配線しやすそうな位置にICを置くと、スペース的にちょっと厳しい。スペースのある位置に置くと、配線が面倒くさい。
今回は、配線の簡単さを考えて、基板の上の方に穴をあけてとりつけることとした。
どっか隙間にICを配置するのもいいかもしれないが、コードがのたくってると、ふた閉めるときに大変そうだし。変な力かかって断線とかしても嫌だし。
それになにより、すでに1個作ってて、そこにギリギリ収まることは確認済みだし。
とりあえず、油性マジックでいろいろメモしておく。どうせ見えなくなるんだから、適当に書いてしまう。
取り付け用の穴の位置や、生かすパターン、殺すパターンなど、とりあえず何でも書いておく。
加工
ドリルで穴をあける。基板のパターンをカッターナイフ等で加工する。
ここが一番大変で面倒で時間のかかる作業である。
電動工具のおかげで、穴をあけることはさして大変ではないのだが、パターンの加工が非常に面倒くさい。
しかし、そもそも全く違う電気回路基板に、無理やり別の回路の部品をつけようってわけだから、ここで手を抜くとちゃんと動作しないのは自明。てなわけで気合を入れる。
加工された基板
ICの足でも、多くの部品を配置しなければいけないものについては、それなりにパターンをあれこれして、部品配置が簡単になるようにしている。
部品の配置とテスト
配線等をしてからミスを発見すると再加工が面倒なので、この段階でパソコンにつないで、ちゃんと認識するかどうかを確認する。
とりあえず最低限の部品として、ボタン関連以外の部品だけくっつけ、同じく、とりあえず必要最低限の配線だけ行う。
で、認識させたら、線をICの足に触れさせたりして、簡単な動作テストを行うわけだ。
とりあえず配線した基板
テスト用の線も仮につないである。
失敗
不明なデバイスとして認識されてしまった。
ICの向きが逆だったり、基板のパターン加工で失敗してたり。
ボタンの配線
サターンパッドの元からあるパターンを利用し、ボタンの配線を行う。
LRボタンは、スイッチの根元から引っ張る方が楽だからそうする。
基本方針は『つながってればいい』
力がかかる部分でもないし、(たぶん)そんなに大電流が流れるわけでもない。
必要な長さにコードを切って、カッターで皮膜剥いではんだ付け。
基本的には、もともとの石が乗ってた部分とICの足を結ぶ作業である。壊れパッドの回路の都合で、Aボタン(1ボタン)だけがちょっと変な配線になるが、やることがそれほど違うわけではない。
えらく細かいはんだ付け作業であるので、以下のようにするのがいいかと思う。
とりあえず、まずコードや基板や足に対して、単独ではんだをつける。
はんだでコーティングしてやる感じ。ペースト入りのありがたみが出る。
で、接触させて、ちょいと熱してすぐ離す。
なにせ細かい部分。余分なはんだをつけないようにするのがコツだろうか?
接続先を間違えないように、地道にはんだ付けする。
ボタン配線完了
配線が終わったらボタンの入力テストを行うので、やっぱしテスト用の線も仮につないである。
コードの色をいろいろ使っているのは、何となく綺麗だから。
組み込み
あとはパッドとして組み立てるだけである。
基板完成
USBケーブルのとりまわしを考えて、ケーブルを加工、はんだ付けして、基板加工は完了。やっぱしテストもする。
ケース裏蓋
ICが多少干渉するので、裏蓋をやすりでちょっと削る。
この写真ではよくわからないかもしれないが。
完成間近
組み込んだところ。完成間近である。
完成!
ボタンなどをつけ、ねじ止めして、完成である。
完成!
前回作成したときには黒サターンパッド(黒というよりはグレーか)だったのだが、今回は白サターンパッドを使ったので、ケーブルの色ともそれほど違和感はないし、よくできてるかと思う。
操作感覚もまあ問題無し。耐久性についても大丈夫だろう。
おわりに
もし、これを見て『自分もやってみよう!』とか思っている方がいらっしゃれば、詳細解説ページを作ることも検討するので、メールなどいただきたい。
おまけ
ついでだから一応紹介する。
USBホリパッドSS
最初に作ったUSBサターンパッドの類。
前回作ったUSBサターンパッド(黒)は、壊れパッド3つ分のお礼として友人に進呈したので、もう手元にはない。
はしもと99のトップにもどる