君は何故か、湖の方へと向かっている。
昔、ひどい目にあったことがないか……?
水精にたぶらかされて、入水自殺するところだったとか……
まぁ、記憶にないのなら仕方がないが。
がさがさ。湖に出る。
……ほ、誰もいない。
全裸の水精が水浴びをしていたりはしなかった……
安心したんだか、残念なんだか。
???「あぁら、いらっしゃいぃ」
……反射的に、三歩ほど飛びずさる。
背後から女性の声がかかったのだ。
振り向くと、いつぞやこの湖で水浴びをしていた水精だった。
……今日はちゃんと服を着ている……
水精「あぁらぁ、まぁた覗きにいらっしゃったのぉ?」
ぶるんぶるん。君は大きく首を振って否定
……できるのか?(−−;)
水精「残念だわぁ……こんなにおいしそうなのに……つまみ食いしちゃおうかしら」
水精は、間延びした声、ほえほえとした笑顔で、いきなり剣呑なことを言う。
目が笑ってないぞ……ヘビのような、獲物を射すくめるような瞳。
大ピンチ何じゃないか? おい。
水精「冗談よぉ……だって止められてるんだもぉん……」
本当に冗談だったかは別として、とりあえず君の命は安全らしい。
よかった……本当に良かった。
思わず「良かった探し」をしてしまう君がそこにいた。
水精「それとも……どぅお? わたくしのお家で、お三時でもぉ」
水精は、湖面の方(しかも、恐らくは湖底)を指さしてほほえんだ。
……遠慮します遠慮します!
君は慌てて、回れ右をした。振り向きもせずに走り出す。
水精「あぁら、シャイな子……惜しかったかも」