月を背に……


 てふてふてふ。
音の無い夜。
 一人歩く。
……なんで、歩いてるんだっけ?

 …………

ま、いっか。
 足は勝手に動き。
どこに向かうとも知れず。
 そんな事も、あるものかもしれない。

 風もそよとも吹かず。
耳の奥、かすかにちりちりという音が聞こえる。
 瞬く星の囁く声。
夢だな。
 とびきりリアルで、飛びぬけて幻想的な、夢。

ひた。
 足が止まる。

 音の無い世界。
音もなくステップを踏む、少女。
 光と闇の世界。
つま先すら地につけずステップを踏む、妖精。

 自ら輝くがごと、後背に月光を従え。
た、た、たたた、たた、た、たたたん。
 耳には感じられぬ、リズム。

鼓動が、直接、頭に響く。
 そして、ふりむく、女性。


……がば。

 夢が、醒めた。
醒めるのが、惜しい、夢。
 君は、ゆっくりと頭を掻く。 

はらり。

 手元に落ちる、一枚の枯葉。


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