森の奥の……


 きょろ。
きょろきょろ。

 辺りに気を配りながら、君は歩を進める。
……もちろん、また突然矢を射かけられない用心である。

 そんな事するなら、わざわざこっちの方へ来なければいいだろう、と言う話もあるが、これも男の意地という奴である。

「おい、そこの」

 うーむ、今日は大丈夫のようだ……

「無視すんなって」

 をや?

ハデハデな風精。


 声は、君の右斜め上方から聞こえてきたようだ。
わっさ、ばっさ。
 見上げると、背中に翼をはやした女性が、舞い降りてくるところだった。
拡げれば、差し渡し10フィートを越えようかという白い翼。器用に折りたたむ。

「よっと」
 最後の数フィートは、飛び降りるようにして、その女性は君の前に降り立った。
……風精……このあたりは、何でもアリだな……

「……と、いうわけで、キミ帰りなさい」
 おや? ぼんやり考えている間に、いつの間にか話が進んでいたようだ。
慌てて、理由の部分を聞き返す。
「理由? そんなもんないって!(^ω^)」
 けらけら。
「あんたでしょう。ここんとこ、この辺をほっつき歩いてるニンゲンって。
しっかも、しつこく何回も。ローリアが困ってたから、私がパトロールを引き受けてあげたんだ」

 ローリアってのは……誰だ?

「ほいほい、とっとと帰った帰った。……どーせ、この先何にもないよ」
……そんな風に言われると、何かあるみたいじゃないか……
 どうしようか、相手は丸腰みたいだし、無視して……


……ぱささ。
ぱさぱさ。
 ささささささささささ……

……ん? 何か、葉ずれの音が大きくなったような……
 気になって、周りの木々を見渡してみる。

 すずめ。こまどり。つぐみ。
 ひよどり、おなが、きじばと。
 ふくろう、みみずく……
……おおたか……?
 君の周りには、すっかり数十種類、数百羽にもなろうかという鳥達。
まさか……

「どう? 私の親衛隊、相手にしてみる?」

……何でもないです……
 君は、すごすごと引き返すことにした……

何だってんだ、一体……


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