魔女の……


黒衣の女「あら、こんばんは」

……あれ? 
 礼拝堂の先客は、時折ここにだけ姿を見せる魔女。
って、名前聞いたことないんだったっけ。
 過去にどんな不幸があったのか、顔の左半分には恐ろしい火傷の跡が残り、左腕も、恐らくはあまり動かせないのだろう、いつもだらりと下げている。
 でも……

黒衣の女「そちらから見れば、普通のニンゲンに見えるかしら? (d^−)」

 また、そんな事言うし。(^ー^;)
彼女はよく自分の容姿を口にする。コンプレックス……って言う気はしないなぁ。
 なんだか、それで相手を試してるって言うか。
ねぇ、魔女さん?
 いつもここに、どうやって来てるの?
誰にも気付かれずにここに来る道って、あるのかなぁ。

黒衣の女「枯れ木の裏で、竜の鳴く……」

 は?(−―;)

黒衣の女「道を忘れると、ここに戻ってくるの。
 ここが始まりなら、来る道は当然、ないということよね?」

 いえ、ことよね? と言われましても……
魔女さんほどの人でも、道って、忘れるもの?

黒衣の女「年は取りたくないものよね……最近、忘れっぽくて(笑)」

……あのぅ(==;)

黒衣の女「あら、真面目に答えた方が良かった?
自分でなんでも出来ると思えば、他人を省みなくなる。力に溺れるとは、そういうことよね。
 自分しか見ないものに、道は見えるかしら」

……ふぅん。
 じゃあ、魔女さんも『力に溺れる』の?

 黒衣の魔女は、静かに微笑んだ。


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